2013-01-01から1年間の記事一覧

ふがいない僕は空を見た

窪美澄著、新潮文庫 小さな町の三流高校生を中心とした日常を、登場人物それぞれの視点で描いた連作短編集。最初の作品の主人公である男子高校生の自宅が助産院であるなど、妊娠・出産(と、そのための行為としてのセックス)がテーマとなっている。コスプレ趣…

男の作法

池波正太郎著、新潮文庫 50歳ぐらいの池波正太郎が、題名の通り、食や仕事、女性、家庭などに関して、男の振る舞い方を論じる。編集者相手に語った内容を文章に起こした、いわゆる語り下ろし形式。食については、ビールは冷たいものとぬるいものが混ざるから…

一刀斎夢録(上)(下)

浅田次郎著、文春文庫 「壬生義士伝」「輪違屋糸里」に続く浅田新撰組三部作の最後の作品にあたる。大正の時代まで生き延びた新撰組三番隊長で、稀代の人切りであった斎藤一の夜語りという構成になっている。 最初に竜馬暗殺が語られ、読者を引き付けるが、…

終わらざる夏(上)〜(下)

浅田次郎著、集英社文庫 日本のポツダム宣言受諾後に千島列島の北端、占守島で起こったソ連軍との戦闘をテーマにした長編。戦闘そのものではなく、そこに至る応召兵やその家族、周辺者らの思いや人生を描くことに重点が置かれている。そのため「戦争の時代」…

駅路―傑作短篇集

松本清張著、新潮文庫 いわゆる推理小説を集めている。全体にトーンは重苦しいが、どんどん話に引き込まれる運びは見事。 嫌な上司を追い落とそうとして、その上司の情婦を殺害。完全に見えた犯罪が意外なところからほころぶ「偶数」や、邪馬台国論争に対す…

テンペスト(1)〜(4)

池上永一著、角川文庫 琉球王朝末期を舞台にした宮廷もの。女性が性を偽り「宦官」として王宮の官僚になり大活躍する波瀾万丈のストーリー。途中からは王の側室との「一人二役」もこなすという荒唐無稽な話になっていく。 中国・清と琉球王朝の違いや、主人…

スプートニクの恋人

村上春樹著、講談社文庫 女性同士の恋愛(片思い)を中心に描いた恋愛小説。長く、時として説明調の会話など、村上文学らしい運び。ここら辺は気になる人にとっては気になるところだろう。 ギリシャを主な舞台にしていて、ドロドロとしたものになりがちなテ…

或る「小倉日記」伝 傑作短編集(1)

松本清張著、新潮文庫 松本清張の短編のうち、現代小説(いわゆる純文学的なもの)を集めた。森鴎外の小倉時代の追跡に夢中になる市井の人を描いた表題作は芥川賞受賞作である。障害を持ちながら研究に情熱を注ぐ男と、それを支える美しい母親の無償の愛は胸を…

ルネサンスの女たち

塩野七生著、中公文庫 「我が友マキアヴェッリ」に続いてチェーザレ・ボルジアの話を読もうと思ったが、図書館にて貸出中だったため、代わりに借りた。塩野氏のデビュー作らしく、この文庫版の初版は、私の生年の1973年である。 政略家だったマントヴァ公爵…

廃墟建築士

三崎亜記著、集英社e文庫 奇想天外な設定が売りの三崎氏による中篇4作が集められた作品。 「となり町戦争」では、「いかにもありそうな」行政文書の描写など公務員作家らしさが光った。本作でも表題作では耐震の構造計算を思わせるような制度を登場させたり…

紅一点論

斎藤美奈子著、ちくま文庫 副題に「アニメ・特撮・伝記のヒロイン像」とある通り、評論家の斎藤美奈子氏が「男社会の紅一点」となっている子供向けテレビ番組や伝記本を斬る。 子供向け番組の紅一点と言えば「ゴレンジャー」などの「戦隊モノ」が真っ先に思…

わが友マキアヴェッリ1〜3

塩野七生著、新潮文庫 「君主論」で知られるルネッサンス期フィレンツェの官僚・作家、マキャヴェリの生涯を描いた長編。「マキャヴェリズム」について関心を持っていたところ、地元の図書館で見つけて借りた。 塩野氏の著作を読むのはしばらくぶりで、前に…

ジヴェルニーの食卓

原田マハ著、集英社 ニューヨーク近代美術館などで勤務経験があるキュレーターの原田マハ氏による短編小説集。本作は今年の直木賞候補になった。 モネやドガら印象派の画家を中心に、史実をもとに画家の「知られざるストーリー」を描く。 画家の周辺者の視点…

これまでに読んだ本

「BORN TO RUN」 Christopher McDougall著、Kindle 「A SON OF THE CIRCUS」 John Irving著、Kindle 「不愉快な現実」 孫崎享著、Kindle 「まほろ駅前多田便利軒」 三浦しをん著、Kindle 「のぼうの城」(上)(下) 和田竜著、Kindle 「降霊会の夜」 浅田次…