駅路―傑作短篇集

松本清張著、新潮文庫
駅路 傑作短編集6 (新潮文庫)
いわゆる推理小説を集めている。全体にトーンは重苦しいが、どんどん話に引き込まれる運びは見事。
嫌な上司を追い落とそうとして、その上司の情婦を殺害。完全に見えた犯罪が意外なところからほころぶ「偶数」や、邪馬台国論争に対する深い考察に、在野の研究者に対する詐欺事件容疑を絡めた「陸行水行」、妹の情夫に対する長い年月をかけての復習とその失敗を描いた「捜査圏外の条件」など、傑作揃いだった。
とりわけ印象的だったのは、自宅近くに停車していた車の中で死体が見つかった嫌な男の殺害について、その妻と情婦に容疑がかかる「薄化粧の男」が印象的。女の描かれ方がリアルで、最後の種明かしに、盲点をつかれた。