紅一点論

斎藤美奈子著、ちくま文庫
紅一点論―アニメ・特撮・伝記のヒロイン像
副題に「アニメ・特撮・伝記のヒロイン像」とある通り、評論家の斎藤美奈子氏が「男社会の紅一点」となっている子供向けテレビ番組や伝記本を斬る。
子供向け番組の紅一点と言えば「ゴレンジャー」などの「戦隊モノ」が真っ先に思い浮かぶ。当然、その戦隊モノも取り上げられているが、本書では特にアニメを取り上げた部分が面白い。テレビでは「魔法使いサリー」や「セーラームーン」など女の子向けの番組だけでなく、「宇宙戦艦ヤマト」や「機動戦士ガンダム」など「戦時」という男社会の極北に生きる女性たちに焦点を当てた。さらに映画では「風の谷のナウシカ」や「もののけ姫」など宮崎駿作品を取り上げていて、幅広い。
その中で、各アニメの世界観を「軍事大国としての男の子の国」「恋愛立国としての女の子の国」に分け、その中で描かれるの女性・少女像は、それぞれ男から見た理想の女性像となっていることを喝破し、斎藤氏らしい評論となっている。
ただ、ナイチンゲールヘレン・ケラーなどを取り上げた「伝記」の部分は若干、子供向け伝記に対するまじめな批評となっており、「斎藤節」としては多少物足りなさもあった。