わが友マキアヴェッリ1〜3

塩野七生著、新潮文庫
わが友マキアヴェッリ 1 (新潮文庫)
君主論」で知られるルネッサンスフィレンツェの官僚・作家、マキャヴェリの生涯を描いた長編。「マキャヴェリズム」について関心を持っていたところ、地元の図書館で見つけて借りた。
塩野氏の著作を読むのはしばらくぶりで、前に読んだものがどの作品だったかは覚えていない。おそらくそんなに長いものではなかったように思う。とっかかりは、日ごろあまり接することのないイタリアについての著述だったからか、なじめない部分もあったが、徐々に慣れ、特にマキャヴェリフィレンツェの書記官として縦横無尽の活躍をする第2巻以降は一気に読み進めることができた。
「目的のためには手段を選ばず」といった権謀術数の「帝王学」のイメージがあるマキャヴェリだが、豪放磊落な部分もある一方で、経費不足を採算嘆くなどせこい一面も見えて興味深かった。特に男女関係にまつわる喜劇も書いたというのは意外な発見であった。
本題の政治についての叙述も、マキャヴェリの足跡に沿ってフィレンツェの興亡史となっている。ただ、おそらく読者が既に読んでいることを前提にしているからであろう、「君主論」そのものについての紹介は少ない。
むしろ塩野氏の思想がところどころ垣間見え、それがマキャヴェリの行動や思想と重なっているところが「わが友」と題した所以なのだろう。各巻末に収録された佐藤優氏の解説も同様である。特にマキャヴェリの官僚として活躍から放逐までと、自らの外務省での活躍から獄中生活までを重ね合わせた第2巻のものは必読だと思う。