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IN ONE PERSON

John Irving著、Simon&Shuster Paperbacks ジョン・アーヴィングの最新作。1930年代に生まれ、バイセクシャルとして生きてきた男の人生を一人称で描いた。 アーヴィング作品にはこれまでにも、同性愛者や性転換者、服装倒錯者がたびたび描かれ、時として重要…

ほかならぬ人へ

白石一文著、祥伝社文庫 著者の直木賞受賞作。以前から気になっていた作家だが、未読だった。 収められた二作はどちらもいわゆる恋愛もので、不倫、あるいは二股愛をテーマにしている。おそらく受賞の対象になった前作は、最初の結婚の失敗(妻が元彼との不倫…

ふがいない僕は空を見た

窪美澄著、新潮文庫 小さな町の三流高校生を中心とした日常を、登場人物それぞれの視点で描いた連作短編集。最初の作品の主人公である男子高校生の自宅が助産院であるなど、妊娠・出産(と、そのための行為としてのセックス)がテーマとなっている。コスプレ趣…

男の作法

池波正太郎著、新潮文庫 50歳ぐらいの池波正太郎が、題名の通り、食や仕事、女性、家庭などに関して、男の振る舞い方を論じる。編集者相手に語った内容を文章に起こした、いわゆる語り下ろし形式。食については、ビールは冷たいものとぬるいものが混ざるから…

一刀斎夢録(上)(下)

浅田次郎著、文春文庫 「壬生義士伝」「輪違屋糸里」に続く浅田新撰組三部作の最後の作品にあたる。大正の時代まで生き延びた新撰組三番隊長で、稀代の人切りであった斎藤一の夜語りという構成になっている。 最初に竜馬暗殺が語られ、読者を引き付けるが、…

終わらざる夏(上)〜(下)

浅田次郎著、集英社文庫 日本のポツダム宣言受諾後に千島列島の北端、占守島で起こったソ連軍との戦闘をテーマにした長編。戦闘そのものではなく、そこに至る応召兵やその家族、周辺者らの思いや人生を描くことに重点が置かれている。そのため「戦争の時代」…

廃墟建築士

三崎亜記著、集英社e文庫 奇想天外な設定が売りの三崎氏による中篇4作が集められた作品。 「となり町戦争」では、「いかにもありそうな」行政文書の描写など公務員作家らしさが光った。本作でも表題作では耐震の構造計算を思わせるような制度を登場させたり…

ジヴェルニーの食卓

原田マハ著、集英社 ニューヨーク近代美術館などで勤務経験があるキュレーターの原田マハ氏による短編小説集。本作は今年の直木賞候補になった。 モネやドガら印象派の画家を中心に、史実をもとに画家の「知られざるストーリー」を描く。 画家の周辺者の視点…