女のいない男たち

村上春樹著、文春文庫

女のいない男たち (文春文庫)

 hontoにて購入。アカデミー賞の作品賞にノミネートされた映画『ドライブ・マイ・カー』の原作が収録されている短編集。映画を遅ればせながらアマゾン・プライム・ビデオで観て、読んでみたくなった。というより、そういう話題になった作品なので、読んでおこうと思った。

 正直言って、映画についても私にはよく分からなかったというか、そんなに楽しんだとは言い難かったが、原作(『ドライブ・マイ・カー』と題された作品に加えて、別の二つの収録策のモチーフも反映されているという)はより私にはよく分からなかった。余韻みたいなものを楽しむべき作品なのかもしれないが、私はいずれも尻切れトンボのような印象を抱いた。

 作品自体よりも印象に残ったのは「まえがき」だった。一つには、この短編集の題名はヘミングウェイの短編集『Men Without Women』からとっていると思っていたが、著者は

(『Men Without Women』は)僕の感覚としてはむしろ「女のいない男たち」よりは「女抜きの男たち」とでも訳した方が原題の感覚に近いような気がする。

としていて、ざっくり否定されていた。また、『ドライブ・マイ・カー』において、雑誌掲載時は実在するものだった町の地名について、苦情が寄せられたたために差し替えたことが述べられている。「まえがき」での書かれ方を見る限り、あっさりと作者による変更が加えられたようで意外だったのと、どうでもいいことではあるが、ずっと以前に北海道の町から苦情が出ているとの報道を目にしたことを思い出し、その作品があの映画の原作だったことに初めて思い至った。