拾われた男

松尾諭著、拾われた男

拾われた男 (文春文庫)

 文庫本を購入して読了。今やドラマや映画の名脇役と呼ぶにふさわしいくらいよく見かける俳優のこれまでをつづった「自伝的エッセイ」。出世作とされるドラマ『電車男』や『SP』は観たことがなかったが、Disney+で配信されたこの本の同名ドラマが面白く、イッキ見したので、原作も読んでみたくなった。

 当然と言えば当然だが、ドラマ版はけっこう細かい脚色が施されていて、イベントが大げさになっていたり、登場人物が統合されていたりといったところはあったが、俳優になるきっかけから、兄や家族をめぐる愛憎の物語など、大筋は変わらなかった。その意味ではドラマチックな半生と言えるが、巻末に

 このエッセイは史実をもとにしたフィクションです。

とわざわざ書かれており、どこまでがファクトなのかは分からない。また、基本的にはコメディータッチなので仕方がない部分もあるが、俳優として成功していく過程をもう少し詳しく読んでみたかった。とはいえ、数奇な人生の物語であることは確かで、テンポも良く(ドラマでおなじみの「それはまた別のお話で」も各回に記されている)、あっと言う間に読み終わった。とにかくドラマ同様、楽しい物語だった。