ふがいない僕は空を見た

窪美澄著、新潮文庫
ふがいない僕は空を見た
小さな町の三流高校生を中心とした日常を、登場人物それぞれの視点で描いた連作短編集。最初の作品の主人公である男子高校生の自宅が助産院であるなど、妊娠・出産(と、そのための行為としてのセックス)がテーマとなっている。コスプレ趣味の主婦との不倫関係を描いた冒頭作と、その主婦の視点から描いた次の作品の展開は見事だった。また絆を深める役割としての大雨・洪水も物語の中で効果的に使われていたと思う(若干、「岸辺のアルバム」との類似性は感じないではなかったが)。
ただ、高校生の友人や母親など、それ以外のエピソードが続いてしまったために、散漫になってしまった印象を受けた。単行本にまとめるにはやむを得ないのだろうが、残念だった。