終わらざる夏(上)〜(下)

浅田次郎著、集英社文庫
終わらざる夏 上 (集英社文庫)
日本のポツダム宣言受諾後に千島列島の北端、占守島で起こったソ連軍との戦闘をテーマにした長編。戦闘そのものではなく、そこに至る応召兵やその家族、周辺者らの思いや人生を描くことに重点が置かれている。そのため「戦争の時代」あるいは「戦時中」の空気を重層的に再現することに成功しており、読み応えがあった。
ただ、戦闘に重点を置かなかったとはいえ、クライマックスの描き方には疑問が残った。特に、それまで人生が詳しく語られてきた主人公格の面々の死が、ソ連兵の視点であっさりと語られたのには、やや拍子抜けした。その意味では物足りなさが残った。