KLARA AND THE SUN

Kazuo Ishiguro著、Faber

Klara and the Sun: Sunday Times Number One Bestseller (English Edition)

Kindleにて読了。ノーベル賞作家、カズオ・イシグロの新作。各種ブック・レビューで評判がよかったので、次は「The Buried Giant」を読もうと思っていて先延ばしになっていたが、先にこちらを読んでみることにした。AIを搭載した子供向けアンドロイド「AF」(Artificial Friend)の独白という形をとる物語である。
読んだイシグロ作品としては、訳書を読んだ「日の名残」と

Never Let Me Go - a follower of Mammon に続き3作目。クローン人間をテーマにした「Never~」と同様、科学技術が進む近未来(?)を舞台とし、倫理や人間性の考察が根底に流れている点も共通している。

淡々としながらも、美しい文体で、洋書の紹介でよくある「Beutifully written」という語がまさに当てはまる作品。病弱な娘のいる母子家庭に購入されたKlaraの生活や運命がテンポよく展開し、いわゆる「page turner」でもあり、1週間ほどで読み終えた。読み始めたら本当にあっと言う間で、印象的な個所をメモするのも忘れるほどであった。

ただし、濃厚な描写や語りとは裏腹に物語自体はやや素っ気ないもので、伏線と思われた数々のディテールが回収されないままあっけなく終わった感があった。また、「Neve~」もマイケル・ベイ監督の映画「アイランド」との共通性が気になったが、本作も、意思を持った機械の純粋性が強調されるあたり、物語の途中からスピルバーグ作品「AI」と共通性が印象付けられた。しかし、そこは「信頼できない語り手」使いとされるイシグロ氏。私の「読み込み」が力不足なのかもしれないが。