鼓笛隊の襲来

三崎亜記著、集英社文庫
鼓笛隊の襲来 (集英社文庫)
バスジャック - a follower of Mammonに続く、三崎氏の短編集。巻頭の表題作の始まりから

 赤道上に、戦後最大規模の鼓笛隊が発生した。
 鼓笛隊は、通常であれば偏西風の影響で東へと向きを変え、次第に勢力を弱めながらマーチングバンドへと転じるはすであった。だが今回は、当初の予想を超えて迷走を続け、徐々に勢力を拡大しながら、この国に進路を定めた。

と来る。「三崎ワールド」全開である。
設定そのものは、意外が思いつきで、ギャグとしか思えないものも多いが、その中で、人間ドラマも描くのが、三崎氏の作品の特徴である。そこが作品に深みを与えているが、その一方で、奇想天外な設定の「種明かし」的な要素がもう少し各作品にあってもいいのではないかと思う。設定そのものは、「非日常」として描かれるものを含めて、作中、終わりまで放っておかれるのが物足りないと言えば物足りないのである。