Never Let Me Go

Kazuo Ishiguro著、faber and faber
Never Let Me Go
長崎出身の英国人作家、カズオ・イシグロの最新刊。ブッカー賞を受賞した「日の名残」とはうって変わって、人間のクローンがテーマ。臓器を「donate」するために作り出されたクローンの少年少女たちの成長物語になっている。同様のクローンコミュニティー(?)の話としては映画「アイランド」があったが、本作では物理的な解放は描かれていない。むしろ淡々と日常や内面を描くことで、有り体に言えば「魂の解放」を描いているように思える。
文体は上質。例えば、主人公のクローン女性が、育った「学校」である「Hailsham」が閉鎖されることを聞いた時の思いに関する叙述。

I thought about Hailsham closing, and how it was like someone coming along with a pair of shears and snipping the balloon strings just where they entwined above the man's fist.

「日の名残」と同じような淡々とした語り口は、確かに美しい。しかし、小説として面白いかと言われると疑問を持たざるを得なかった。クローンに対する「警鐘」なのだとしても。