小説家になる!

中条省平著、ちくま文庫

小説家になる! ――芥川賞・直木賞だって狙える12講 (ちくま文庫)

 hontoで読了。確か安売りしていたのを購入した。ゆえにあまり期待せず、暇つぶし程度に考えていたが、なかなか読み応えがあった。副題にあるよに「芥川賞直木賞だって狙える」かどうかはともかく、「物語の構造分析」に始まり、「神話に学ぶ」「レトリックを習得する」などの12講は、なるほどと思わせるものが多かった。

 命の経済 - a follower of Mammon と同じように、映画が漫画について学ぶところが多いと説いている。すなわち

 十九世紀には、マンガ家にも映画作家にもなる人々がいなかったから、物語を語るという才能が小説に集中したのかもしれないけれども、いまやコンピュータゲームの作者にもなれるし、映画監督やシナリオライター、マンガ家にもなれますから、小説は必ずしも物語の特権的なメディアではなくなり、さまざまなメディアによる物語が氾濫していくなかで、小説もそうとう高度な吸引力を発揮しなければ生き残ることができないのではないかと思うんです。

とのことである。そのうえで、楳図かずおのSFものや「風の谷のナウシカ」を取り上げ、いわゆる空想科学を重視する姿勢も共通している。結局は大事なのは想像力であり、それがもっとも発揮されるのがSFということなのではないかと思った。

 筆者は仏文学者のようだが、なぜ小説の書き方本を出しているのかはよくわからなかったが、「あとがき」によれば、本書は「小説家になる!2」であって、実は「1」が「小説の解剖学」と題して同じちくま文庫にあるらしい。これによって小説が書けるようになるかどうかはともかく、この「解剖学」も読んでみたいと思わせるには十分な内容の濃い読書であった。