ほかならぬ人へ

白石一文著、祥伝社文庫
ほかならぬ人へ (祥伝社文庫)
著者の直木賞受賞作。以前から気になっていた作家だが、未読だった。
収められた二作はどちらもいわゆる恋愛もので、不倫、あるいは二股愛をテーマにしている。おそらく受賞の対象になった前作は、最初の結婚の失敗(妻が元彼との不倫に走る)から、女性上司と結ばれるまでを描く。
主人公心の揺らぎが丁寧に描かれ、幼馴染みの許嫁の主人公の兄に対する片想いのエピソードなどは読ませた。また、なかなか真相がつかめない妻の行動も謎めいていてスリリングではあった。
ただ、最終的に結ばれる女性上司というのが、やり手でいい人だが、いわゆるブスで、しかもガンを患っているといういかにもな設定。これこそが理想の愛だと言われても、なかなか感情移入できない。