IN ONE PERSON

John Irving著、Simon&Shuster Paperbacks
IN ONE PERSON
ジョン・アーヴィングの最新作。1930年代に生まれ、バイセクシャルとして生きてきた男の人生を一人称で描いた。
アーヴィング作品にはこれまでにも、同性愛者や性転換者、服装倒錯者がたびたび描かれ、時として重要な役割を演じてきた。例えば、「A SON OF THE CIRCUS」では性転換者が殺人鬼という設定であった。このような性の多様性は、アーヴィング作品を重層的にしている一つの特徴だと言える。
今回は、その同性愛をテーマの中心に据え、米国での偏見の歴史やHIV禍の悲惨さなどを描いている。思春期の悩みと成長に多くを費やしているのはアーヴィングらしいのではあるが、テーマがテーマだけに、ついていくのに骨が折れた。また、ディフォルメもアーヴィング文学の特徴とはいえ、男女問わずに周囲が次々と同性愛者だった、という展開には無理があった。