文士と姦通

川西政明著、集英社新書
文士と姦通 (集英社新書)
文芸評論家の著者が、姦通(いわゆる不倫)した作家がたちを紹介し、その対応からそれぞれの人となりを炙り出す。
取り上げられているのは、北原白秋芥川龍之介谷崎潤一郎宇野千代島崎藤村らそうそうたる面々。日本的私小説作家らしく、それぞれ「姦通体験」を作品に反映していることが多く、記述がなまなましい。
例えば、茶屋の女と関係があった志賀直哉

女には彼の妻では疾(とう)の昔に失はれた新鮮な果実の味があつた。(中略)北国の海で捕れる蟹の鋏の中の肉があった。

と表現している。