「英語が読める」の9割は誤読

越前敏弥著、thejapantimes出版

「英語が読める」の9割は誤読 ~翻訳家が教える英文法と語彙の罠

 図書館で借りる。著者は文芸翻訳家で、翻訳講座の講師もしているらしい。誤訳しやすい英語表現を分かりやすく、詳しく解説する。

 Chapter1はいきなり練習問題の連続で、解説もかなり本格的な文法の解説が多く、読み進めるのに苦労した。しかし、Chapter2以降は、テーマごとに区切った読み物的な形式になり、楽しめた。2021年9月の発行だけに、タイムリーな話題も多く、興味深かった。例えばBlack Lives Matterについて

 英語表現としてのニュアンスを考えるとき、忘れてはいけないのは、動詞のmatterはふつう肯定文では使われないということです。(中略)matterは単に「重要だ」ではなく、「重要じゃないなんて、とんでもない!」という反発・抵抗の響きが確実にあります。

 と紹介され、納得がいった。また、コロナ禍によく耳にする「ピークアウト」についても

 英語では動詞peakに副詞outがついても、「ピークに達した」を強めているだけなので、意味は「ピークに完全に達した」です。

 として、「和製英語が生まれる典型的なプロセス」と紹介されている。

 英語を日本語に翻訳する場合、と言うより、日本人が理解する場合に大事な考え方が詰まった本である。しかし、結局のところ、特に翻訳で大事なのは、その意味するところやニュアンスをどう日本語に落とし込むかなのだろう。巻末の「お勧め翻訳学習書」などを参考にしながら、さらに精進する必要がありそうだ。