ジダン

バティスト・ブランシェ、チボー・フレ=ビュルネ著、陣野俊史、相田淑子訳、白水社
ジダン
サッカー元フランス代表の天才的なMF、ジデディーヌ・ジダンの「初の本格的伝記」(帯より)という。仏スポーツ紙のライターの著作という。
実を言うと、フランス語の勉強熱が再燃した理由の一つはこの本でもある。読んでいて、訳がどうもしっくり来ない部分が多い、徐々に「原文で読みたい」と思うようになった。スポーツに関する文章を面白く翻訳することの大変さは、英語でも独特の言い回しもあって難しいことは理解しているつもりだ。それでも、というかだからこそ、原書で味わいたくなった。300ページ弱で2400円という値段も高い気がした。おそらく原書のペーパーバックの方が安いであろう。
さて、中身。出生から引退(書き出しはあの「頭突き事件」である)までのキャリアがどちらかと言えば淡々とつづられている。著者も巻末近くで認めているように、プライベートはあまり明かされておらず、ジダン人間性のようなものには迫れていない。「頭突き」に至るジダンの性格的な遠因みたいなものがもう少しうかがえるのかと思っていただけに、残念だった。
ただ、2004年の最初の引退を決意した理由を説明したシンプルな言葉は印象に残った。

勝ち残っている時よりも負けた時のほうが、退くことは遙かに簡単だ。おなじ感動を引き起こせるならば人は続投したいと思うものだ。負けるともっと辞めやすくなる。

自身も何とも語っているように、おそらく「シンプルな人間」であろうことがうかがえた。