その話、諸説あります。

ナショナルジオグラフィック編、日経ナショナルジオグラフィック

その話、諸説あります。

 図書館で借りる。世の中にある確定していない「諸説」について、「モナ・リザのモデル」や「人魂の正体」、「地球外生命体」などテーマごとに説を並べて紹介していく。たいていのことは「確定していない」という前提で、そういう意味では、軽い感じの読み物でありながら、「科学的な思考」についての実践的な書でもある。「はじめに」では「教科書に載る前の世界へようこそ!」として

 最初にお断りしておくと、この本に正解は書かれていない。いや、もしかしたら正解も含まれているかもしれないけれども、そうではない可能性も高い、曖昧な説ばかりを集めた本だ。

 テレビ番組などで、物事の成り立ちや歴史を紹介しているとき、「※諸説あります」といった注意書きのテロップが表示されることがある。人によっては異なる説を持っていると強調することで、放送した内容が正しいわけではない、ほかの説もあるがどちらも間違いではない、という責任逃れの免罪符のように感じる人もいるかもしれない。

 だが本来、「諸説」とは言い訳のための言葉ではない。広辞苑で「諸説」をひくと、「もろもろの意見。いろいろの学説。種々のうわさ」と説明されている。「うわさ」のようないい加減なものもある一方、「意見」や「が右折」といった真面目なものもある。そして意見や学説は、そのままでは放っておかれない。いったん諸説が生まれるや、そのなかのいったいどれが正しく、どれが間違っているのか、追究が始まるのである。

とある。

 取り上げられるテーマは多岐にわたり、「ケネディ暗殺の黒幕」など定説がないことが知られているものや、最近学説の主流が変わって私が習ったころ以降に教科書も書き換えられていることが知られる「鎌倉幕府の成立」などなじみのあるものも多い。一方で「近視の原因」や「ヒトが二足歩行を始めたきっかけ」など、当然既に理由が分かっていそうなことも、意外と説が確定していないことに驚いた。

 「世界史」や「科学」、「宇宙」など大テーマごとにそれぞれ微妙に書きぶりが違ったが、それもそのはず、それぞれ異なる監修者の学者がいることが巻末に明らかになる。

 いずれにせよ、やや掘り下げが物足りない部分もあったものの、非常に興味深い本で、あっという間に読み終えた。