子どもが作る弁当の日 「めんどくさい」は幸せへの近道

城戸久枝著、文芸春秋

子どもが作る弁当の日 「めんどくさい」は幸せへの近道

 図書館で借りる。恐らくどこかの書評で読んで興味を持ったのだと思う。

 学校で、児童・生徒が弁当を作って持ってくる「弁当の日」という取り組みがある。全国の1割の学校で行われているというので、それなりに知られているのかもしれないが、私は知らなかった。

 帯にあるように、準備からすべて子どもだけでやり、親は手伝わないというのが決まりだという。最初は「めんどくさい」と言う子どもたち(一部の教師・保護者ら大人たちも)だが、やってみると、考えが変わり、食や家族について見つめなおしていくという。

 本書は、この「弁当の日」についてのドキュメンタリーを撮っている元西日本新聞記者の安武信吾氏の依頼で、ノンフィクションライターである著者が、おの運動を始めた人(香川の小学校の校長先生だった人)や取り組みを始めた人らへの取材をまとめている。

 全体として「いいことづくめ」な印象があり、取材対象も西日本を中心に地域の広がりはあるものの、ある種の「仲間」に限られている印象がある。そのため、本来踏み込むべき課題といった面に踏み込み切れていないことは否めないが、著者と同じように親として気づかされることは多い。例えば

はじめて弁当の日について聞いたとき、私はなぜ抵抗を感じたのだろう。その理由はなんとなくわかっていた。あの時、抵抗を感じたのは、母に料理を教えてこなかった祖母や、私に料理を教えてこなかった母のことを否定されるのではないかと不安になったから。

 との著者の思いは、同じく親から料理を受け継いでいない自分としても身につまされた。

 また、平易な文体で子どもにも読みやすくなっている。自分の子どもたちにも読ませたいと思った。が、うちの高2の息子は毎朝自ら弁当を作る子になっているので、余計なお世話かもしれない。