盆踊りの戦後史

大石始著 筑摩書房

盆踊りの戦後史 ――「ふるさと」の喪失と創造 (筑摩選書)

 図書館にて借りる。その名の通り、各地の盆踊りの変遷を戦後を中心にたどる、かなりニッチな本。今やなぜ図書館で予約したのか分からないが、おそらく書評で読んだのだろう。

 村落の宗教行事や性を含めエネルギー発散の場だった盆踊りは、明治から昭和にかけて禁止令などを経て健全化していく。戦後は、戦没者追悼などの意義も持つようになり、高度成長期には、副題にある通り、団地やニュータウンでの「ふるさと」の創造の役割も果たすようになる。また、バブル期以降はポップスやロックなども取り入れられるようになり、2000年代には荻野目洋子の「ダンシング・ヒーロー」が広がっているということなどは知らなかった。その過程を、各地の具体的な事例を取り上げながら紹介していく。また、盆踊りなどの行事が次々と中止となったコロナ下の昨年についても紹介し、コミュニティーを結びなおす場として重要性を説いている。

 叙述は、関係者のコメントを中心にしており、盆踊りや夏祭りの「熱量」を伝えているとは言い難い。ただ、私の世代のことについて

 だが、一九七〇年代中盤以降になると、第二次ベビーブーム世代の子供たちを含むニューファミリーは、比較的しがらみの少ないコミュニティー活動に関わるようになっていく。自治会や町内会が主催する盆踊り、地域のスポーツクラブがそれにあたる。いずれも主人公は子供たちだ。

 とし、著者が小学生時代に参加した盆踊りについても

確かにそこでかかっていたのは「ドラえもん音頭」であり「アラレちゃん音頭」だった。僕が小学生だったその時期は、アニソン音頭がかかる手作り盆踊りの全盛期でもあったのだ。

 として懐かしい。

 私はあまり社交的ではなく、必ずしも盆踊りのような行事は好きではない。ただ、それこそ小学生時代は父親が勤める会社主催の盆踊りに毎夏参加していたことを思い出す。本書ではそのような企業の取り組みも紹介している。また、自治会の取り組みという意味では、私が今住む地域でも毎夏開かれている(御多分に漏れず、昨年は中止となったが)。私の子供たちも、いずれ同じようにある種のノスタルジーの対象とするようになるのだろうと思い、あまり面倒がらずに参加しようと改めて思った。