二畳で豊かに住む

西和夫著、集英社新書
二畳で豊かに住む (集英社新書)
日本建築史を専攻する学者による、「究極の極小住居」についての考察。内田百輭高村光太郎夏目漱石ら住んだ「二畳程度」の住居を列挙している。例えば、漱石は、学生時代に後の満鉄総裁、中村是公と二畳(あるいは三畳)に下宿していたといい、

部屋は北向で、高さ二尺に足らぬ小窓を前に、二人が肩と肩を喰っ附ける程窮屈な姿勢で下調べをした。

などと当時の様子を自ら書き記しているという。
私も、幼い頃から「究極のシンプルライフ」としての極小空間での生活を夢想したりしている。キャンプに行ってテントで寝るが好きなのも、恐らくそのような憧憬のためであろうと思われる。そういう意味では、このユニークな本にも惹かれ、特に高村光太郎の「田舎生活」などは興味深かった。一方で、お遍路のための四国の「茶堂」や、川崎にあった多摩川の渡しの「船頭小屋」などは「住まい」と呼ぶには無理があり、若干、本としての焦点がぼやけた印象を持った。
ただ、最後の章となる、戦後の建築家が提案した小住宅についての論はかなり興味深く、「極小住宅ファン」としては、この辺りをふくらました次回作に期待したい。