日本近現代史講義

山内昌之細谷雄一編著 中公新書

日本近現代史講義-成功と失敗の歴史に学ぶ (中公新書)

 図書館で借りる。明治維新以降の日本の近現代史について、年代を追って学者たちが講義した14講に加筆してまとめたものだという。

 各講(章)はそれぞれ別個の学者が担当している。「明治維新」や「日清戦争」、「東京裁判」など一定の期間が区切られているものの、歴史を俯瞰することに力点が置かれているためか、より広い時間(期間)の中での出来事の意義を描こうとしているものが多い。例えば、岡本隆司氏による第2章「日清戦争と東アジア」では、はじめに日清戦争とともに秀吉の朝鮮出兵朝鮮戦争の図も紹介し、朝鮮半島をめぐる争いとしてその関連性を印象づける。そのうえで、同じく朝鮮半島をめぐる争いだった日露戦争日清戦争の「再現だった」として、

だとすれば、日清戦争はいまなお、終わっていないともいえようか。朝鮮戦争がまだ正式に終戦を迎えていないからである。(中略)地政学的なパワーバランスは、そうした不易の本質をそなえている。

 と、ダイナミックな論が展開されている。また、山内昌之氏が序章で、明治維新以前の徳川幕府の統治にも目を向ける必要性を説いていることなども印象に残った。

 もともとの講義は自民党の「歴史を学び未来を考える本部」なる組織でのもののようだが、そうとは思えないなかなか重厚な内容。図書館で予約している次の本の受け取り期限が迫っているため、駆け足で読んだが、本来ならもっとじっくり読みたかった。手ごろな新書なので、改めて購入してもいいとさえ思った。細谷雄一氏が「おわりに」で紹介しているハーバード大歴史学部のアーネスト・メイ教授の言葉の通り、歴史とはまさに「無限の宝庫」である。