予告された殺人の記録

G・ガルシア=マルケス著、新潮文庫
予告された殺人の記録 (新潮文庫)
コロンビアのノーベル賞作家、ガルシア=マルケスの作品を初めて読んでみた。本当は「百年の孤独」を読みたかったが、残念ながら文庫化されていないようなので、作家の自己評価も高い本書にした。
閉鎖的な町で起きた凄惨な殺人事件を、関係者の証言などから重層的に描いている。あくまでも小説だが、「ニュージャーナリズムの金字塔」と評されるカポーティの「冷血」と似た構成になっている。
被害者の親友であった「わたし」がまとめた「記録」という形。143ページという「中編」ながら、中身の濃い作品に仕上がっていて、乾いた簡潔な文体は、南米の風土と、壊れ行くコミュニティーという小説が描こうとしたテーマの一つにマッチしていた。
また、事件の動機となる、新婦の処女を奪った男が殺された被害者自身なのかどうかは、結局、謎のまま終わる。私は、検察官の調書に残った新婦の簡潔な言葉に、女の怖さを見た気がした。

「彼はそのときの相手(アウトール)です」