翻訳夜話2 サリンジャー戦記

村上春樹柴田元幸著、文春新書
翻訳夜話2 サリンジャー戦記 (文春新書)
村上氏と翻訳家・柴田氏の翻訳についての対話の続編。村上氏が翻訳した「キャッチャー・イン・ザ・ライ」の宣伝のための対談が中心となっている。そのためか、どちらかと言えば、作品そのものについての考察(ホールデンサリンジャー自身なのか、とか、ホールデンが入っているのは精神病院なのか、とか)が中心となり、翻訳の技術についての話は、前作に比べると少なくなっている。
その中で、ジョークや比喩の翻訳について、村上氏が以下のように語っているが印象に残った。

ただ、「頭が羊羹みたいになっちゃう」とかそういう感じで訳したところがあったですね。テキストにはもちろん羊羹なんて出てこないんだけど、でも、書いているうちに、これは羊羹だなと思うと羊羹とすっと書いちゃうんです。間抜けのことは、たとえば「蓮根アタマ」とか書いちゃうんですよね。なんとなくそのほうが日本語の話し言葉としてしっくりするから書くのであって、べつにウケを狙ってやっているわけじゃない。

なお、私も「キャッチャー」は発売直後に読んだが、本書を読んで、登場人物など内容がほとんど頭に残っていないことが分かった。私はそれほど「サリンジャー向き」の人間じゃないということだろうか?