パレード

吉田修一著、幻冬舎文庫
パレード (幻冬舎文庫)
最近「悪人」が映画化されて話題の吉田修一氏の作品を初めて読んでみた。実際は新訳 走れメロス他四篇 - a follower of Mammonの前に読み終えていたが、ブログにアップするのを忘れていた。
若い男女4人がマンションの一室に住むという米ドラマ「フレンズ」のような設定。新宿で男娼をするサトルを加えた5人の視点の物語が連続する。それぞれ淡々とした語り口の中で、一人一人の人間性が次第に明らかになる。例えば、イラストレーター兼雑貨屋店長の未来が見たサトルは、別の女性(琴)の口を借りて次のように語られる。

話によると、とても愛し合っているご両親に、愛情をたっぷり注がれて育ったらしいから、何かに対して貪欲になるってことを知らずに生きているのかもしれない。

5人目で恐ろしい事件の真相が明らかになるが、唐突で、動機もよく分からないままだったのが残念だった。サスペンスよりも、若者たちの人間模様として読んだ方が楽しめる作品だと思う。