太陽の塔

森見登美彦著、新潮文庫
太陽の塔 (新潮文庫)
日本ファンタジーノベル大賞を受賞した森見氏のデビュー作。(例によって恐らく)京大生が、恋人に振られたいきさつを振り返るという物語。デビュー作らしく、お約束になっていく詭弁論部やら何やらは出て来ず、何となくその手のアイデアのようなものが見え隠れする程度(偽叡電とか)。また、その後の作品に比べて性に対しても直裁的で、

「道行く女性を襲う男が雷としたら」
井戸がぶつぶつ言う。「避雷針はAVかな」

などと語られる(後の作品なら「AV」は恐らく「猥褻図書」になっているだろう)。また、「太陽の塔」の描き方など、劇的にしようと肩に力が入っている気がする。そういう意味では「若い」作品である。