新訳 走れメロス他四篇

森見登美彦著、祥伝社文庫
新釈 走れメロス 他四篇 (祥伝社文庫 も 10-1)
太宰治の「走れメロス」や中島敦の「山月記」、芥川龍之介の「藪の中」など日本文学の名作の舞台を現代の京都に置き換え、大学生を主人公にした「森見氏流」の新訳。語り口は毎度おなじみのもので、「走れメロス」では主人公が約束を「守らない」ために逃走し、「山月記」では虎ではなく「天狗」になってしまうなど、アイデアも面白い。例えば「メロス」では、メロスにあたる大学生・芽野が、詭弁論部員にこう叫ぶ。

「自分が可愛いだけじゃねえか。本当の友人ならば俺の生き様を黙って御覧じろ!」

そして

「詭弁もたいがいにしろ!」
「てめえはそれでも詭弁論部か!」

と続くのである。

ただ、「メロス」と「山月記」以外は元の作品を読んだことがないため、それ以外の翻案の妙は理解できなかったことが残念だった。