さよなら、愛しい人

レイモンド・チャンドラー著、村上春樹訳、ハヤカワ文庫
さよなら、愛しい人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
昨年秋からランニングを始め、今は1日10キロほど走れるようになった。今月は暑さやら忙しいやらで大して走れていないが、先月は計160キロになった。それはそれで充実感はあるが、一方でマイナス面もある。出勤前に走ると、やはり疲れるため、通勤の電車の中でほぼ寝てしまうようになった。いきおい読書の時間が減るのである。前回のエントリーが6月10日。実に2ヶ月ぶりに本を読了した。この本を読了できたのも、走る量が落ちていることと反比例しているような気がする。それでも、走れていないことがやはり気になる、という要するにアンビヴァレントなものなのである。
さて、本作はロング・グッドバイ - a follower of Mammonに続く、村上氏2作目のチャンドラー作品翻訳。「ロング・グッドバイ」よりも前に書かれた作品とのことで、村上氏もあとがきで書いているが、マーロウの年齢も恐らく若く設定されている。そのせいか、話の筋も分かりやすく、マーロウの行動も直線的で好感が持てた。例えば、物語のキーパーソンである美女、グレイル夫人の執事との電話でのやりとりは次のようにすっきりしている。

「あなたはミスタ・グレイルですか?」
「いいえ、そうではありません。執事(バトラー)です」
「間もなくドアベルが聞こえるだろう。鳴らしているのは私だ」と私は言った。

この勢いをかって、元の読書生活に戻れるといいのだが…。