誰も知らなかった賢い国カナダ

櫻田大造著、講談社+α新書
誰も知らなかった賢い国カナダ (講談社+α新書)
カナダ地域研究を専門とする関西学院大教授が、米国の影に隠れがちなカナダの政治などを紹介した本。経済では日本以上に米国依存ながら、イラク戦争には賛成しないなど、独自の風土を持つ「豊かな大国」として紹介している。政党政治について紹介したくだりが長い(なじみがないだけに長く感じられたのかもしれないが)うえにややデータ過多となっているきらいはあるものの、「カナダ入門」には格好の本ではないかと思う(そもそも一般読者向けの「カナダ入門」がどれだけあるのか知らないが)。冒頭に、マイケル・ムーアの「ボーリング・フォー・コロンバイン」がカナダ資本で制作されたというくだりには「へえ〜」だったし、「多文化主義」については

理想をいえば、カナダに必要なのは、より団結力を持ったさまざまな価値観や多様性を「受容する」社会ではないか。

 エスニック・グループ間の「相違」を極度に強調しすぎるあまり、むしろカナダ社会を「分裂」させているのではないか、との批判もある。

などとしつつ、肯定している。カナダ社会の奥深さを示していると言えるが、欲を言えば、この辺りのことをもっと詳しく読みたかった。