ベストセラーで読み解く現代アメリカ

渡辺由佳里著、亜紀書房

ベストセラーで読み解く現代アメリカ

 図書館にて借りる。これも何かの書評で目にして予約した。

 著者のことはこれまで知らなかったが、アメリカ人と結婚してアメリカに住む女性による米国で売れている本の書評というか、本を入り口にアメリカ社会をまさに読み解くエッセー集。「ニューズウィーク日本版」の連載などに加筆したものらしい。

 年間200冊の洋書を読むという読書家だけに、ノンフィクションから小説、児童書まで紹介される本は幅広い。2016年の大統領選ではヒラリー・クリントンを応援していたことを公言しており(言わずもがなという気もするが)、リベラル寄りらしく、フェミニズムや同性愛などをテーマにした本も数多く取り上げている。2020年3月初版なので、トランプ政権誕生の背景やそれに対する危機感についても論じている。単なる「本の虫」ではなく、大統領選挙の候補者集会に足を運んだり、著者と話をしたりなど「取材」もしており、話に深みを与えている。まさに(トランプは既に過去の人になってしまっているものの)現代のアメリカを知るための良書である。

 中でもトランプ政権発足直後に精神科医がまとめた「The Dangerous Case of Donald Trump」はなかなか興味深そうなものであった。また、「片付け本」で知られる「こんまり」の著書がアメリカでベストセラー1位になるほど人気だというのも本書で初めて知った。

 「読んでみたい」と思わせる本ばかりで、著者は書評のウェブページも主宰していると言うので、さっそくメールマガジンに登録した。これまで洋書については「NewyorkTimes Book Review Podcast」が唯一と言ってもいい情報源だったので、広がりが出るのは間違いない。しかし、洋書については現在、kindleで読みかけが1冊、さらに手つかずのものが1冊ある状態。和書もそれなりの数読んでいる。kindleで辞書引きが楽になってだいぶスピードアップしたとはいえ、それでも洋書を読むのは時間がかかる。今後は取捨選択が問題になりそうだ。