フェルメール−謎めいた生涯と全作品

小林頼子著、角川文庫
フェルメール  ――謎めいた生涯と全作品  Kadokawa Art Selection (角川文庫)
「日本におけるフェルメール研究のスペシャリスト」とされる目白大教授によるガイド本。あまり詳細が明らかになっていない、オランダ17世紀の画家・フェルメールの生涯を振り返り、(あくまでも推定の)年代記的に現在に伝わる作品を逐次解説している。
作品はすべてカラー刷りで紹介され、(文庫本なので当然だが)小さいながらも、解説の内容と実際の作品を照らし合わせることができる。

 人間の目にとって合理的な空間とは何か、合理的な光の表現とは何か。フェルメールの試みはその二点を巡って展開してきた。

とされるその軌跡(制作年がはっきりしている作品が数点しかないため、推測の域を出ない部分もあるが)をたどることができる。また、終章にまとめられている現存する二つだけの都市景観作品、特に「デルフト眺望」はこの目で実物を見たいと思わせた。
ただ、作品によっては、解説があまりにも短い。私は「真珠の耳飾りの少女」の、あの愁いを含んだ(と勝手に思っている)瞳に魅せられている。おそらく日本では最も有名なフェルメール作品(本書の表紙にも使われ、テレビ東京美の巨人たち」のオープニングにも登場する)であろう。しかし、本書の記述では、別の「少女」という作品と合わせて2ページと3分の1ほど。さすがに物足りなかった。