つながり過ぎた世界の先に

マルクス・ガブリエル、大野和基インタビュー・編、高田亜樹訳、PHP新書

つながり過ぎた世界の先に(世界の知性シリーズ) (PHP新書)

 図書館で借りる。以前、何かのインタビューでマルクス・ガブリエル氏の理路整然とした回答を観て、一度著書を読んでみたいと思っていたことを思い出した。新書で手軽そうな2冊を図書館で予約したが、著書ではなく、ロングインタビューをまとめたもののようだ。

 インタビューの時期は、2021年初頭のようだ。副題のようなのものに「コロナ後、資本主義はどう変わるのか」とあるように、コロナ禍を経た所感が中心となっている。その中で、感染者数を一人歩きさせる統計的なものの見方に疑問を呈し、「質的モデル」への転換を求めたりしているのは、理解しやすい。また、トランプの米大統領当選について、まずメディアが偏向し始めて(つまり、左右で対立したということか)、それが原因でトランプが大統領になったと指摘しているのも一理あると思う(これをトランプ擁護論とととるのはまた違うのではないかと思うが)。

 ただ、最も共感したのはそのような「政治的」な部分ではなく、例えば「神の正体」と小見出しがついた次のようなくだりである。

 親を亡くしたとき、私たちは宇宙の深淵に触れます。だから神聖な何かとつながったという特異な感覚を得るのです。私の哲学では、神聖性とは、自分が「全体」とつながる経験であり、人間の限りなく複雑な感覚が感じとる現実に他ならないのです。それが神の実体なのです。

 このような思考を深く知るには、やはりインタビューではなく、きちんとした著書を読むべきなのだろうと感じた。