ノヴァセン

ジェームズ・ラヴロック著、藤原朝子監訳、松島倫明訳、NHK出版

ノヴァセン 〈超知能〉が地球を更新する

 図書館で借りる。「ガイア仮説」のラヴロックの遺作となったのだろうか、地球の未来予想をする。副題に「<超知能>が地球を更新する」とあるように、人類の後はAIなどの機械(著者はそれを「サイボーグ」と呼んでいる)が地球の主となると予想している。そして、それにともなって地質年代としてのアントロポセン(=人新世)が終わり、ノヴァセンになるという。

 より晩年の書だけに、ガイアの復讐 - a follower of Mammon よりもこれまでの自身の歩みの振り返りが多くなっている。そういう意味では、フラーにおけるクリティカル・パス - a follower of Mammon のような位置づけといえるかもしれない。分量は本書の方が圧倒的に少ないが。

 また、話としては壮大で、AIやロボットが地球の支配者になりかねないことはなんとなく分かるものの、地球のためにその「超知能」が人類と対立しないと予測している部分などは今一つ腑に落ちなかった。なんとなく科学者なりの夢物語というような風情もあるのだが、一方で、例えば「資産の半分をなげうって自ら火星に行こうとする超富豪」について

 地球の真の状態を無視してそんな冒険を企てることは、究極の不条理に思える。わずかな火星のオアシスを探そうという希望がその巨額の費用を正当化することはない。特に、そうした惑星探査の費用のほんのわずかでもリサーチにあてれば、地球についての重要なデータが得られるのだからなおさらだ。

としている点など、もっともな論を展開して苦言を呈していて、共感した。