宇宙船地球号操縦マニュアル

バックミンスター・フラー著、芹沢高志訳、ちくま学芸文庫

宇宙船地球号操縦マニュアル (ちくま学芸文庫)

 図書館で借りる。ガイアの復讐 - a follower of Mammon (hatenadiary.org) と同様に地球に住めなくなる日 - a follower of Mammon (hatenadiary.org) で紹介されているのを読んで借りてみた。1969年に出版された書籍の新訳(と言ってもこれも2000年の刊行である)。著者は20世紀を代表するアメリカの技術家で、マーシャル・マクルーハンは「現代のレオナルド・ダ・ヴィンチ」と称したらしい。昔『素敵な宇宙船地球号』という番組があって、よく観ていた記憶があった。地球を一つの生命体とすることと同じように、概念としてはすっかり定着した感があるが、こんなに昔から提唱されているとは知らなかった。

 環境問題に対する視点もさることながら、全体的に先進的な考えが散りばめられていて、やはり60年代の書籍とは思えない。オートマトン的な作業はコンピューターに取って代わられるので、人間は独創性を取り戻すべきだと説く。また、車の所有をやめて借りることにしたとして、「所有はしだいに負担になり、不経済になり、それゆえ時代遅れになりつつある」と指摘している点などは、まさに今を先取りしていると言える。

 また、化石燃料をめぐっては

宇宙船地球号」に積み立てられた化石燃料は、自動車でいえばバッテリーに当たるもので、メイン・エンジンのセルフ・スターターを始動させるためにエネルギーを蓄えておかなければならいものだ。だから私たちのメイン・エンジン、つまり生命の再生プロセスは、風や潮汐や水の力、さらに直接太陽からやってくる放射エネルギーを通して、日々膨大に得られるエネルギー収入でのみ動かねばならない。

と整理している。再生可能エネルギーへの転換を呼び掛けるにあたって、これほど分かりやすい話はないと思うし、『ガイアの復讐』にも同じようにエンジンに例えるくだりがある(もっとも、メインのエネルギーを原子力にしているが)という点も興味深かった。