地球に住めなくなる日

デイビッド・ウォレス・ウェルズ著、藤井留美訳、NHK出版

地球に住めなくなる日 「気候崩壊」の避けられない真実

 図書館で借りる。副題に「『気候崩壊』の避けられない真実」とあるように、気候変動によって生じている影響や被害を紹介し、今後の見通しやすべきことを論考する。著者はニューヨーク・マガジンという雑誌の副編集長で、もともとは同誌の記事だったらしい。2019年に出版された原著はニューヨーク・タイムズの同年の「ベストブック100」にも選ばれているという。

 総論の後に第2部で熱波や飢餓、海面上昇など、気候変動によって起きている影響を各論的に紹介。さらに資本主義やテクノロジー、政治などの大きなツールが解決策になりくくなっていることを論じる。アメリカ人の著者だからか、全体的に日本人には身近な豪雨被害よりも、日本ではそれほど大々的に報じられているとは言い難い、カリフォルニアなどの山火事被害について多く語られているのが印象的だった。

 題名から想像できる通り、地球温暖化の悪影響が「これでもか」とばかりに次々と押し寄せてくる本である。そういう意味では「読む人は読むし、読まない人は見向きもしない」という分断をはらんだ本である。だからこそ、著者が冒頭、

 私は環境保護主義者ではないし、いわゆる「ネイチャー系」でもない。

などとしつつ

 つまり私は、気候変動に無頓着で、あえて現実から目をそらしている多くの――全員とは言わないが――アメリカ人のひとりなのだ。だが気候変動は、地球が直面するかつてない脅威だ。

と「カミングアウト」したうえで、論を展開しているのは一つの工夫ではあるだろう。ただし、そういう意味では、題名がキャッチ―ではあるものの、やや急進派(もちろんそのくらい危機的だ、ということなのは分かっているが)に振れているような気がした。