怪異猟奇ミステリー全史

風間賢二著、新潮選書

怪異猟奇ミステリー全史(新潮選書)

 図書館で借りる。著者は早川書房を退社後、幻想文学研究家・翻訳家として活躍しているらしい。ミステリーの「源流」とされる西洋のゴシック小説に始まり、エドガー・アラン・ポーコナン・ドイルといった探偵・推理小説、日本の翻案小説から江戸川乱歩、最近の「新本格」まで、題名の通り、ミステリーや、いわゆる「エログロ」小説などの流れを概説している。

 個人的にミステリーはあまり読まず、エログロや猟奇・奇譚の類になるとほぼ読まない。なのになぜ図書館で予約したのかは今は思い出せない。おそらく新聞の書評か何かの影響だと思うが、あるいは子供のころ読んだ江戸川乱歩の名前があって懐かしくなったのかもしれない。

 そういう意味では全体的についていけない部分も多かったが、例えば、似非科学観相学や骨相学がホームズの造形に与えた影響を論じたくだりなどは勉強になった。さらに

 社会という身体(環境)の中の病原菌(犯罪者)を同定(探偵捜査)し、統御(逮捕・監禁)し、最終的には根絶(処刑)する。まさにこうしたレトリックが多用されることからわかるように、十九世紀末には細菌学と犯罪学が同種のものとみなされました。

として、この点もホームズが誕生した文化的な背景だとしている。子供のころからホームズの推理にただ単に「すごい」となんとなく思ってきたが、その背景を含めた読み込みをする必要性を感じることができた。