海の教科書

柏野祐二著、講談社ブルーバックス

海の教科書 波の不思議から海洋大循環まで (ブルーバックス)

 だいぶ前に購入した。地球温暖化の影響をはじめ、海についてのさまざまな現象を科学的に学びたいと思って購入したが、けっこう専門的な部分も多く、遅々として読書が進まなかった。少し時間ができたこともあって、一気に読み切った。

 著者は地球環境科学博士で、海洋研究開発機構地球情報基盤センター技術主幹という、この道の第一人者といっていい人なのだろう。海洋観測の現在から、波の仕組みなどの基本、海洋大循環、エルニーニョ現象、北極・南極の海まで、多岐にわたるテーマを取り上げる。科学的な部分はついていけないところもあったが、細かい説明が分かりやすく、面白い小話的なものが散りばめられている。例えば「海水のpHと海洋酸性化」では

 この海洋酸性化により海の生態系が大きく変わることが心配されています。例えば貝殻やサンゴなどは炭酸カルシウムで殻や骨格をつくりますが、その炭酸カルシウムは炭酸イオンと海水中のカルシウムイオンにより作られます。ところが海洋酸性化が起こると炭酸イオンが増えた酸により中和されるため、貝やサンゴは殻や骨格を作りにくくなります。

と紹介し、分かりやすい。

 また、最近の日本の異常気象的な状況にも関係があるエルニーニョラニーニャについても章も分かりやすかった。海洋に囲まれた島国・日本に住む人にとっては、有効な学びになる手軽な一冊だと思う。