「小さな大国」ニュージーランドの教えるもの

日本ニュージーランド学会、東北公益文科大学ニュージーランド研究所編、論創社

「小さな大国」ニュージーランドの教えるもの―世界と日本を先導した南の理想郷

 図書館で借りる。ニュージーランドに関心を持っているが、書籍はあまりなく、検索でヒットした比較的新しい(と言っても初版は2012年である)本書を読んでみることにした。

 「序」において

 本書の刊行の契機になったのは、「今こそニュージーランド!」という執筆者共通の認識である。歴史的にも、日本、そして世界は、ニュージーランドに多くのことを学んできた。近年の動向を見ても、とくに日本はニュージーランドに学ぶ点が少なくなかった。

として、行政改革・民営化や大地震後の救援・再生、原子力・核をめぐる動きなどを紹介している。日本と同じような島国で、人口は440万人弱という「小国」ながら、税金によるサービス方式の社会保障制度や、世界初の女性参政権付与、義務教育の無償制、最低賃金制、家族(児童)手当制度など、先進的な取り組みがいろいろある。

 本書の構成は、それぞれ執筆者の研究テーマなどに基づいて、保育の在り方や犯罪被害者支援、先住民施策などの論文を掲載する形をとっている。もともと知っていたのは巻末の「ラグビー」くらいで、かなりマニアックなものもあり、決して楽に読み進められるものではないが、ニュージーランドの先進性や、日本とは違ったその「豊かさ」を感じ取ることができた。

 英語圏の情報は、英米、とりわけアメリカに全面的に偏りがちだが、ニュージーランドについてももう少し日本で知られてもいいと強く思った。