THE NEW LONG LIFE

Andrew J. Scott & Lynda Gratton著、BLOOMSBURY

The New Long Life: A Framework for Flourishing in a Changing World (English Edition)

 Kindleにて読了。両著者による訳書『LIFE SHIFT』が話題になっていることを知り、その続編にあたる本書(邦題は『LIFE SHIFT2』)を読んでみることした。

 著者はどちらも英国の学者のようで、簡単に言うと、education, work, retirementというthree stageだったこれまでの一般的な人生が、平均寿命が長くなったことにより、multi-stageになると説き、その背景や、どうすればいいかを説いている。長寿命によってより長く働き続ける必要があることに加え、AIの導入やオートメーション化の進展によって、「学び直し」が求められることを説いている。そのために個人や企業、政府がやるべきことを説明していく。

 なるほどと思わせることも多いが、論旨自体は目新しいものではない。「長さの割に内容が薄い」というレビューも見られるが、確かに論の展開も駆け足で、データなどの掘り下げも物足りない点も多い。また、世界中の何人かの架空の登場人物(日本の若い夫婦や米国のトラック運転手など)の物語仕立てで論の展開を試みているが、それもそれぞれの人が「結局どうなったのか」はなく尻切れトンボになっている。前著を読んでいないので何とも言えないが、前著の二匹目のドジョウを自ら狙った続編なのかもしれない。

 ただし、自らの寿命が本当に伸びているのかどうかはともかく、会社員としての人生の先行きに希望を持てない私のような人間には勇気づけられる内容であることは確かだ。例えば、ニュージーランド財務大臣が2018年に'well-being' budgetなるものを提案した時のスピーチで

focus on lifting well-being will require a different approach and different measures of success

として、GDP以外の尺度の導入の必要性を訴えたことなどが紹介されている。「成長」一辺倒ではない世の中の到来を予感させるものである。

 本書の「軽い」内容だけを元に新たな人生に踏み出すのは危なっかしい気もするが、新たな人生に踏み出す支えの一つにはなるだろう。