「とりあえずビール。」で、不登校を解決する

蓑田雅之著、びーんずネット

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 新聞で著者の紹介を読み、「びーんずネット」から直接購入。著者は元不登校児の保護者で、保護者向けに不登校との向き合い方について講演や執筆などの活動をしている人とのことで、びーんずネットも同じく不登校の保護者向けの団体とのことである。副題に「お父さんといっしょに考えたい不登校のはなし」とあるように、不登校児の父親向けの本で、同種の本は母親向け、あるいはざっくり保護者向けに書かれたものが多い印象で、珍しい。私の小3の娘も、不登校とは言えないまでも、学校を休むことが多くなり、参考になるかと思い、読んでみた。

 筆者も記すように、親にとっては深刻にとらえがちな「とりあえずビール。」は不真面目に見えるかもしれないが、居酒屋で何も考えずにまずビールを注文するように、不登校との最初の向き合い方(というか考え方)に力点が置かれている。つまり、子どもが学校に行きたがらないことを受け入れ、子どもの心の状態を理解していくことが、その「ビール」ということで、そこからどうしていくかはメニューを見ながらじっくり検討すればいいのではないか、ということを説いている。まさに「親父向け」ということがすとんと落ちるいい題だと思った(居酒屋の例えがすとんと落ちるかは世代などにもよるのかもしれないが)。

 また、子どもが学校に行きたがらないことを受け入れるのはいいとして、親としてはどうしてもそのことを「サボり癖」や「怠惰」なのではないかと疑ってしまいがちである。特に宿題をやっていなかったり、学校に行く準備をしていなかったりして休んでしまうような場合はなおさらである。結果、不登校を認めることは「甘やかし」ではないか、という疑念を生むことになるわけだが、著者は

 はい、ハッキリいって「甘やかす」ことになると思います。でも、子どもを甘やかすのは、決して悪いことではありません。いや、むしろ一般的に「甘やかし」に見えるやり方で子どもに接したほうが、不登校の子の自立は早まるのです。

と言い切る。そして、その理由が後半で詳しく語られ、それなりの納得感を得ることができた。

 うちの娘は、学校に行く日の方が多く、不登校とまでは言えない状態ではある。しかし、登校を嫌がること自体にどう向き合えばいいのかという点で、非常に参考になる良著。子どもの不登校に悩んでいる親は身近にも多く、広く読まれてほしい本だと思った。