兄弟は他人の始まり−介護で壊れゆく家族

真島久美子著、講談社
兄弟は他人の始まり 介護で壊れゆく家族 (介護ライブラリー)
脳梗塞の母親と認知症の父親の壮絶な介護記。著者は私には未知だったが、漫画家としてデビューし、自らのお見合い体験をまとめた「お見合いの達人」という本で話題になった人らしい。
筆致はあけすけで、筆者の気持ちを隠さずに暴露している。夫の実家に絡む人間関係も遠慮なく批判しているが、読んでいるこちらが「こんなものを出版して、その後の家族関係は大丈夫なのだろうか」と心配してしまうほどだった。一方で、家族の一部に対する憎悪のような感情の原因が著者自身の思い込みだと思われる部分もなくない。終盤に出てくる友人が長い間絶縁していた弟とのわだかまりについて、友人に諭される以下のようなエピソードには救われた気がした。

「(前略)弟さんのいいところを見るようにしてあげて」
 そう言われて、私はやっと自分の本心に気づいた。(中略)血のつながった弟だからといって、私の価値観を強制するわけにはいかない。私にも「たったひとりで両親を介護した」というおごりの気持ちがあった。弟と私では、母への思いが違っても仕方がない。それを責めることは、なんの意味もないことなのだ。

それよりむしろ、この本のよさは細かいエピソードの具体性である。父親の生命保険を解約する時に、保険会社に何度電話しても断られたのに、苦情担当に電話を掛けて苦情を申し立てたらすぐできた、といったあたりはリアル。自らも以前に倒れた経験を持つ両親を抱える私としては「明日は我が身」を思わされた。
そういう意味では「兄弟は他人の始まり」という題名は、本書の価値を半減させているのではないかと思う。超高齢化社会を迎える中、数多くの類書との「差別化」を図っている(実際、私もこの差別化のおかげで本書を購入したと言えなくもない)のだろうが、若干残念である。たまたま私が一人っ子なので、そう思うだけなのかもしれないが。