風の歌を聴け

村上春樹著、講談社文庫
風の歌を聴け (講談社文庫)
村上春樹氏のデビュー作。村上氏の小説を読むのは「海辺のカフカ」以来になる。これが「シュール」と言われるものだと言われればそれまでだが、どうも好きになれなかった。しかし、今やノーベル文学賞候補の常連と言われ、現代日本の作家では最も海外で読まれている村上氏を知ることは、大げさに言えば日本人として必要なことだと思い、買ってみた。
訳書はこれまでにも大量に読んでいるので、文体自体にさほどの違和感はないが、本作もやはり「どうも…」という感じであった。話は帰省した大学生の生活のスケッチ。友人の「鼠」や女性たちとの交わりが洒脱に描かれている。だが、主人公が介抱した(ことになっている)女性は、やや直接的な描かれ方がされ過ぎている印象があった。例えば

「何故人は死ぬの?」

と主人公に聞かせたりしている。しかもそう聴いた理由がすぐに明らかになったりしている。この辺りが、その「シュールさ」を弱めているような気がした。