やがて哀しき外国語

村上春樹著、講談社文庫
やがて哀しき外国語 (講談社文庫)
村上春樹氏がプリンストン大学で講師をしていた頃に書いたエッセー集。主にアメリカ文化(プリンストンの文化)について論じている。また、村上氏が作家になる前、ジャズバーを経営していた話が繰り返し語られるなど、きょうびのファンなら常識なのかもしれないが、私には新たな発見もあって興味深かった。
表題作「やがて哀しき外国語」は、外国語の習得にまつわる話。その中で外国人(この場合は米国人)同士の会話の中に入った時のとまどいが語られる。

一対一で話す分にはまだそれほどの不便はないのだけれど、それが四人になり五人になり、会話が仲間うちの機関銃的ラピッド・ファイアになってくると、もう話の筋を追っていくだけでやっとである。話自体はなかなか興味深くはあるのだけれど、じっと聞いていると二時間くらいで神経がくたびれて弛緩してくる。神経が弛緩してくると、集中力が低下してきて、こっちの英語もだんだんうまく出てこなくなる。

これは私も、外国人と話す時によく経験することである。
また、ロバート・アルトマンの映画「ショート・カッツ」は、カーヴァーの短編をつなぎ合わせたものたったいうことは、恥ずかしながら知らなかった。村上訳のカーヴァー作を読んでいて感じていた漠然とした既視感みたいなものの原因はどうやらこれだったらしい。