ロング・グッドバイ

レイモンド・チャンドラー著、早川書房
ロング・グッドバイ

チャンドラーの名作の村上春樹氏による新訳。ここのところ、村上氏の翻訳物を読むことが多い。もともと村上氏の作品自体のファンではないが、訳している作品に興味をひかれているためだと思う。
グレート・ギャツビー」に続き、村上氏に大きな影響を与えたという本作。私自身はおそらく大学時代に「旧訳」を読んだ記憶があったが、物語の内容までは覚えていなかった。あるいは途中で投げ出してしまったのかもしれない。
話の中身については、マーロウがテリー・レノックスに惹かれた理由がいまいちぴんと来なかったこと以外は特に言うことはない。序盤は話にもたつき感があったものの、中盤からは引き込まれた。
訳についても「村上節」は極力抑えられた客観的な、いわばハードボイルドに合ったものだったように思う。だが、逆に言えばそれならば村上氏があえて訳さなくてもよかったような気がしないでもない。
それと「男は強くなければ生きていけない。しかし、優しくなければ生きていく資格がない」というような有名な台詞は、この作品のものではなかったことを知った。あれは、どの作品に出てくるのだろうか。