月曜日は最悪だとみんなは言うけれど

村上春樹編訳、中央公論新社
月曜日は最悪だとみんなは言うけれど (村上春樹翻訳ライブラリー)
村上春樹翻訳ライブラリー」の一冊。村上氏が好きな作家、レイモンド・カーヴァーティム・オブライエントム・ジョーンズらの短編や、彼らについての雑誌記事などの翻訳を集めたもの。基本的には中央公論の連載だったらしい。
カーヴァーの初期の作品を「共同執筆」したと主張する編集者らの話をまとまた冒頭の記事「誰がレイモンド・カーヴァーの小説を書いたのか?」は、編集作業を経て出版される(作家が1人で書斎に篭もって書き上げたものがそのまま世に出るわけではないという意味で)「小説(家)とは何か」ということを考えさせられた。いわば、カーヴァーに疑問を呈する内容なのだが、その次にカーヴァーの友人の小説家による、没後10年の追悼文を掲載するあたり、村上氏らしい。また、ジョン・アーヴィングの自宅でのインタビューをまとめた「ジョン・アーヴィングの世界(改訂版)」も、さほど驚くべきものはなかったものの、作家の生き様が伝わり、ファンとして興味深かった。
何より、巻末にある村上氏による「翻訳の寿命は、いったいどれくらいのものなのだろう」が印象に残った。

文芸誌で新人賞をとって小説家としてデビューしたときに、まず頭に浮かんだのは「これで翻訳の仕事ができるようになるかもな」ということだったと記憶している。

とのこと。これまでの訳書の数からいっても、村上氏が翻訳に並々ならぬ思い入れがあることは理解していたが、これほどとは知らなかった。