海を越える日本文学

張競著、ちくまプリマー新書
海を越える日本文学 (ちくまプリマー新書)
著者は、上海生まれの中国人で、明治大教授らしい。専攻は比較文化論とのことで、帯に「なぜ村上春樹ばかりが注目されるのか」とある通り、海外での日本文学の「翻訳のされ方」を論じる。それも、おおざっぱに言って「欧米」と、著者の母国である「中国」での傾向が比較される。それは「氷点」の三浦綾子と村上の、日本での「もてはやされ方」を比較した「おわりに」で次のように端的に表れる。

 その違いは何に由来したのでしょうか。端的に言えば、村上春樹は欧米人に褒められているからです。(中略)三浦綾子は東アジアに人気があったとはいえ、欧米では認められてはいません。つまり本物ではない、ということです。

若干、極端ではあるものの、日本人の「評価の仕方」の根底にある、一つの尺度を見事に言い表していると思う。