となり町戦争
三崎亜記著、集英社文庫
住んでいる町が、地域振興のために隣接する町と戦争をする、というストーリー。突飛な設定の小説で最近知られるようになった著者のデビュー作。著者自身も公務員であるらしく、戦争の「事務手続き」や予算獲得・消化などのメンタリティーの描き方にはさすがにリアリティーがある。例えば「偵察員記録表」など所々に掲載されているペーパー類にも末尾に
〜この用紙は再生紙を使用しています〜
と書かれるなど芸が細かい。
さて、肝心の「戦争」だが、ドンパチが描かれるわけではなく、何となく始まり、何となく終わる。何となく犠牲を感じさせる程度で終わっている。それが筆者の狙いなのかもしれないが、つかみどころがない。村上春樹氏の影響を感じさせないでもないが、役所的なリアルと、生活感の非リアルがアンバランスであった。