生物学的に、しょうがない!

石川幹人著、サンマーク出版

生物学的に、しょうがない!

 図書館で借りる。おそらく新聞の書評欄で紹介されていたのだと思う。著者は進化心理学者とのことで、「生物学的な観点から心理を語る」というようなことを研究しているらしい。本書は、「人前で話すの苦手」や「不安になっちゃう」「おいしいもの食べて太っちゃう」など、人間によくあることが、「生物学的にしょうがない」ということを紹介していく。大半が狩猟採集時代の協力集団にルーツがあるとされている。また、根源的な動物としてのルーツに理由を求める例もある。例えば、「幸せなはずなのにネガティブになるの、しょうがない!」の項では

 生物学的に感情は、動物の行動を起こしたり方向づけたりするものです。現状が満ち足りた状態であると、新たな行動を起こさなくてよいので、感情が喚起される必要がないのです。

とその理由を説明している。さらにネガティブになる理由は「人間は未来志向だから」として、

 現在が満ち足りた状態であればあるほど、未来は現在よりも悪くなると考えてしまうのも、当然です。

としていて、奥が深い。

 項目が細かく別れていて、カラーの活字なども使い、各項目の最後に「無罪」の札を持った女性が理由を一言で説明する仕掛けなどとっつきやすいように工夫がされている。「欲望がわくのは、しょうがない!」などとして性や恋愛、下世話な話についても取り上げており、飽きさせない。理由付けがやや強引と思われるところも無きにしもあらずだが、興味深い読書体験ではあった。本書を読んで、何事も「しょうがない!」と言うようになったら、問題ではあるが。