ハッピー・リタイアメント

浅田次郎著、幻冬社文庫
ハッピー・リタイアメント (幻冬舎文庫)
自衛官らがはちゃめちゃな活躍をする、浅田文学における「ギャグ系」の新作。今回は役人の天下りがテーマになっていて、債権回収のための特殊法人に、退職した自衛官と財務官僚が、時効を迎えた債権を回収して大金をせしめる、というストーリー。特に元自衛官の細部の人物造形は相変わらずで、無気力ムード漂う天下り機関で

「はい、何でしょうか」
立花女史が視線を向けると、大友勉はやおらソファを揺るがして立ち上がった。
「あ、どうぞお座りになったままで」
自衛隊ではいちいち立ち上がって発言をするのだろうか。女史が手をさし延べると、大友は困惑ぎみに腰をおろした。

とやらせる。
ただ、肝心のストーリーは浅田氏にしては一本調子で、全体的に消化不良と言わざるをえない。読了までえらく時間がかかってしまった。